秋刀魚の味

秋刀魚の味
(平山家)
(周平ー妻 死去)
(幸一)結婚して団地暮らし、妻は秋子
(路子)
(和夫)

(三浦豊)幸一の同僚
(佐久間先生)一人娘


平山周平は、適齢期にさしかかった娘の路子をそろそろ嫁にやらねばと心の底では思っている。家事のほとんどを路子に任せているので、家から居なくなれば、不自由をするのだが、それはそれでなんとかしなければならないとの自覚はある。同級会に出てみると、恩師として出席した漢文の佐久間先生が、昔日の面影は影を潜め、飲食業で四苦八苦しているのを知る。父親と娘の二人だけの家族。今後の見込みの立たない家業に付き合わせて、娘も独身のまま今日に至ってしまったと嘆息するばかりであった。その姿に、周平はいよいよ、今のうちに娘を嫁がせるべきだという気持ちを強くしたのだった。以来、なにかと周平は、しきりと娘に、見合いを勧め、だれか意中の男性がいるならそれはそれでなんとかすればいいと良い、家のことは次男の和夫となんとかやっていくので心配いらないと言うのだった。そんなある日、路子は、実は兄幸一の会社の同僚である三浦という男性に好意を寄せていたのだという。思いは、父親の周一を通じて幸一に伝えられ、その幸一は、とある喫茶店にはなしがあるのでと三浦を呼び寄せ、ひざをつき合わせることになるのだった。なんですと尋ねる三浦に、結婚の予定はあるのかと切り出す。のびのびとした希望を抱かせるダンス風のバックミュージック。話は、同じ同僚の女性とゆくゆくはいっしょになる可能性があるのだと。その女性とどのへんまで交際しているのか詳しく言いなさい。まあ、手ぐらいは握ったことがあるかどうだか、という程度です。そうか、そこまで展開しているのなら、邪魔をする必要もあるまい。では聞くが人に此処まで話をさせておいて、だんまりは無しですよ。言ってください。実は、別にも話があったんだ。それなら聞かせてください。妹なんだ。残念。遅きに失しましたね。以前それとなく私が言ってみたことがある。すると、結婚なんてまだまだだ、今、家から彼女が居なくなったら、大変なことになる。そういったじゃないですか。そんなことを言ったか、全然覚えていなかった。そうだとしたら、おれの方で謝る。とまあこんなやりとりなのだった。このことは実家に帰って父親の周平に報告されるが、この内容を父と、幸一のどっちが、路子に伝えるかでもめるあたりも面白い。結局、路子は、父親の勧める見合い話にのり、めでたく結婚へとこぎ着けたのだった。