格安旅行

格安旅行に思う。
中国江南の旅の料金は、
小生の郷里秋田県を訪問するのに利用する新幹線等とほぼ一緒だ。
安い分、忍ばねばならない困難も幾つかある。
その一つを紹介したい。
それは、バスの移動時間が
全日程の6割かそれ以上を占めるのにもかかわらず、
バスにトイレがないということだ。
上海の空港から蘇州市まで、
ノンストップで3時間近くかかったように思うが、
トイレタイムもなく、
40名近くの誰もがトイレへの声を上げなかったのは、
不思議な気もする。
ともかく、そのことは覚悟しなければならない。
せっかくの旅行だから、
ビールをという気分にもなる。
そして車中、
たばこはダメだが、飲酒は特に禁止されてはいない。
だが、誰も、アルコールを手にする者もいない。
飲みたくとも、
トイレのことを思えば、
我慢するしかない。
お茶や水でさえもだ。
前回の旅で、
こっそりと飲んだところ、
まもなくトイレに行きたくなり、
たいへんな思いをしたことがある。
その時は、後方の座席は誰もいなかったので、
袋をもってこっそり
アレをしようかという思いが強かったが、
結局、我慢した。
その割にはトイレでは、思ったほど出なかった。
神経的にもなっていたせいであった。

さて、今回、
4日目の夜のことだった
夕食後、オプショナルに参加する者たちを除いて、
20名弱が、ホテルへ向かった。
ものの20分と経たず、
一人が、運転席近くへと行き、ひそひそ話。
(高速道路で停車してもらえないか、その交渉だったらしい)。黙って戻った。
まだ、かけだしの見習い中と思われる女性ガイドは、
こわだかに、
「おとうさん、がまんしないで、
するものがないなら、ポリ袋を準備してあげるよ」
言ったのだった。
それで、男性が、
小便のがまんできないことが、
公衆に知れるところとなったのだった。
「いいよ、がまんするよ」
「だめよ、体に悪いよ」
そんなやりとりが
前方と後方でやりとりされたが、
すこしして男性は、目的を達成したらしく
動くバスの中、ゆっくりと歩いて、前方にいった。
「ほら」
と前の方に持参した。
下方にのびたポリ袋は、
それはまるで、使用後の男性避妊具の
上端をつまんだような具合なのだった。
どこからともなく、
クスクス笑いがもれた。
心の中では、自分ばかりでもないのだなあと思ったのだった。