スピーチ会

映画「キクとイサム」を見た。どちらも小学生で、肌の色が黒い。両親はいない。昭和20年代という舞台設定で、黒人の米兵だった父親は、戦後混乱の収まりが一段落して帰国してしまう。母親は病死。彼らを育てているのは、祖母だ。福島の農村で、粗末な家屋に暮らす。小六のキクは、家庭環境の劣悪さとか肌の黒いことには、少しも、気にかけず、意地悪をされてもへこたれず、何事にも前向きに生きる明るい少女。小三のイサムには、米国の富裕夫妻から、養子縁組の話がもちあがる。その気があれば大学まで進学させてもらえ、有能な社会人になれる道までが与えられる。しかし、いくら金持ちとはいえ、本当に血のつながった子として育ててもらえるのか。村人たちの間で、ちょっとした議論が起きる。列車で、別れを惜しみ、イサムは突然泣き出す。その後のことは描かれていない。映画からは離れるが、キク役を演じた高橋さんという女性を、見かける機会があった。高橋さんは、映画に出演したのは、一度きりで、その後はジャズシンガーとして活動したという。もう七十代と思われる「キク」さんは、その話しぶりは無論、外見も、親が黒人だったとは思えない、ごく普通の、文化的日本女性になっている。すでに、日本には多くの国から労働者等でやってきて、暮らしている外国人がいる。この傾向はますます強まるであろう。親の中には、日本でひともうけして、帰国して、故郷に錦を飾ろうという気持ちの人もいるかもしれない。しかし、日本で育った子供は、多くの場合、ものの考え方は日本人そのものになってしまうのかもしれない。この映画そのもの、そしてキク役として出演した高橋さんを眺めてそんな風に強く思った。