櫻の園

映画「櫻の園」は、もう二十年前のものだが、見ていてグングン惹きつけるものをもっている。
 一番初めに見たのは幕張にある放送大学図書館だ。二度目は、近くの県立図書館だ。そして、今回は自宅のパソコン画面で、ネット配信「gyao」を通じて何度も見る機会を得た。
 何度も?そう、今年の夏は連日熱帯夜。
我が住処は、エアコンの無い4畳半。四階なので風が少しでもあれば南と北の両面の窓を開けることで、自然の風が通り抜けけてくれる。三十度以上でも、風が汗ばんだ肌を、かすかにマッサージ?して外へと通り抜けてくれる。しかし、風が無い夜などは、この「櫻の園」をバック音楽のように掛けっぱなしにして、横になって過ごしたりした。それは実に充実した満ち足りた時間と言えた。
 
 桜華学園では卒業演劇・チェーホフ作「櫻の園」を上演することになっている。この上演を巡る学園ドラマなのだが、その良さは、女子校が舞台なのに、意外と「静かな」場面に満たされた、大人のドラマだというに尽きる。
 無論、ちょっとした対立とか、叫びとかあるのだが、どこの学校でもやりとりされているような、極めて普通のやりとりであふれている。
 オーディションで選ばれた女生徒たちは、それぞれが、持ち味を出して演じている・・。シミズ部長が、パーマをして登校、これを部員達が巡って色んな反応を示す。スギヤマさんが、喫煙を補導され、「櫻の園」上演が中止になりかかる。皆が猛反発をするなかで、主演の重圧にうちひしがれていた女生徒は、密かに中止を願っているのだとうち明ける。
 誰も居ない教室で女子校に来た理由をのべ合う二人。
 迫り来る上演に、衣装を着て親友同士で写真を撮る二人。
 緊張を紛らわすために又、タバコをもてあそぶ。
 それぞれが、部員達とやりとりする中で、一人だけで、あるいは同じ思いを意識する同士だけで、こっそりと「何か」をする。それが、また新鮮に見えてくる。
 こうして暑苦しい夏を、「櫻の園」を何度も見て過ごしたのだった。