戸田家の兄妹

戸田家の兄妹、をみた。経済界にも顔が利いたという父親が亡くなって、次ぎにやってきたのが、膨大な債権への支払い。邸宅も手放すことになる。
 同居していた妻、その次男、三女は家を失ってしまう。次男は海外へ赴任するが、残った二人(母と節子)は、長男夫婦の家に寄寓することになる。
 お客扱いにも限界がある。
 ある日、長男の妻・和子は訪問者があるので一日外出してくれないか、と二人に伝える。
 老いた母と節子はそれぞれ銀座とか上野公園とかで過ごす。帰宅して、その晩、眠りに就こうとしていると、けたたましいピアノの音。
 寝苦しい母を察して、節子は、和子の居る部屋に行く。丁重に、申し訳ないけどピアノをやめてくださらない、と申し出る。
 和子は、ピアノを前に、深夜のピアノを詫びつつ、
 「ここは私が悪かったかもしれないけど、こちらも色んな面で我慢していることを察してちょうだい」ととげのある口調で切り出す。
 その日のことに難癖をつける。訪問者がまだ在宅中に帰宅したのに、挨拶もせず、過ごしたことを取り立てて、非難するように言う。
 朝に、私たちにともかく外出するように伝えたので、しゃしゃり出ないのがよかろうと思ったのだ、と理由をいうが、その訪問者も全くお母様の知らない人でもないのに、知らない振りをするのは失礼よと。
 続けて、「誰だって自分のことは悪く思わないけど、他人のことは目に付くのよ。挨拶くらいはしてほしかった、分かって、私たちも我慢しているのよ」と厳しい言葉が続く。
 節子は折れて、「今後気をつけます」と。
 間もなく、二人は長男夫婦の家を出て、住むに耐えないと言われる別荘に移り住むことになる。
 冒頭では、うやうやしく、戸田家に挨拶しに出た長男の妻、和子も、狭い家に、二人を抱えて態度を変えるのだが、これを批判することもできない。

 私は職場で似たような状態に陥っている。でも、次の職場が見つかるまで辞めるわけにもいかない・・。