学歴不問

学生時代のクラス、所属する機械工学科には、
大学教授にまでなったのがいる。
当時、口癖のように言っていた。
だれでもやれる仕事にはぜったい就かない。
試験を通過して、
努力した者だけが集まるようなところでやっていきたい、と。

(かっこうつけるな、などと僕はおもっていた)
その言葉をだれから学んだかわからないが、
ことば通り、大学院に進学し、
研究者の道をたどった。
皮肉にも、
僕は、誰でもやれるような業界でやっている。
はずかしくて、
まちがっても大学の同窓会などには出席しようと思わない。
同窓会では正統的な道をたどった者が声高らか
出席しても肩身が狭いだろう。
学歴不問、
誰に対しても門戸をひらいているところで
芋をあらうがごとくの日々だった。
言葉のぞんざいな同僚がいっしょのとき、
本当に、自分が底辺社会でもがいているのだと実感する。
しかたがない。
現在、子供が高専に在学。
5年生。
40名が入学。
5年生になれたのは30名弱。
特に半数を占める推薦入学は
中学校でトップクラスが建前となっている。
多くは大学レベルの数学で脱落していくという。
高専を勧めたのは、父親たる僕なのだった。
大学受験は6月から8月にかけてなされる・・
編入試験を受けるが、
6月が願書提出時期になっている。
親として情報を収集し、
首都圏の大学を中心に願書を取り寄せている。
僕も家庭教師として高校生に数学を教えていた時期もあったが、
大学教養程度の数学となると
チンプンカンプンなのだった。
解答例をみただけでもこの世のものと思えぬ、
人を煙の巻くような記号のオンパレードである。
1973年からのオイルショック不景気の時期のせいもあったが、うまく就職ができなかった。
いや、就職してもうまく勤まったか自信がない。
こどもは、性格が少し明るい。
それがすくいだった。
進学するにしても、
就職するにしても
初心を貫いて、
人柄のよい技術者として
世に貢献してほしいと願うばかりなのだった。