牛 第11課(その2)

牛 第11課(その2)
 大牛伯説:”不是、我的歌、是我邦一下分量消重了点、或打断筋(くもやんは言うのだった、「ちがう、だんな、私が叩いたのが少しばかり重過ぎたのだ、筋を切ってしまったかもしれないのだ」”
”邦是傷転黄(それは傷が炭素病になったんだ)、我打包票(私が請合う)、掌這薬去就行(この薬を持っていけば大丈夫だ)」
 大牛伯心想:(くもやんは考えた)”黄薬我家還少?(その薬なんか家にまだあるぞ)要走十里路来討這鬼東西(十里も歩いたのはそんなモノを貰うためかって!)把口一ヒ(口をねじ曲げて)、イ故了一ケ可笑的表情(笑うべき表情となった)。
 説也奇怪(不思議も不思議)、先是説的十分認真了(初めに言ったことは、十分に本当だと思ったのだ)、決不能因為這点点小事走十里路(こんな小事の為に十里も来られるものか)。到後大牛伯忽然想透了(後になり、くもやんは思いがけなく悟った)、明白一定是嫌包封太軽了(きっと包みが軽すぎると嫌っているんだ)、答応了包好別酬制銭一串(しっかり包み別な報酬、制銭一串を承知した)。這医生心中活動(この医者の気持ちは動いて)、不久就同大牛伯在官路上奔走、取道回桑渓了(まもなくくもやんと道を急いで、桑渓へむかった)。
 這名医和大城中名医開不両様(この名医は、都会の名医となんら変わるところがなく)、有名医的排場(名医の格式を備え)、到了家(家に着くと)、先渇酒取暖(先ず酒を飲み暖を取った)、吃点心飯(軽くご飯を食べた)、飯用過後(食事をすると)、易完牙歯(たっぷりと楊枝を使い)、又吸一会煙(しばらくタバコを吸って)、才要主人把牛牽到坪中来(やっと主人に牛を庭に引いて来させ)、把衣袖巻到肘上(袖を肘の上に捲くり)、従ケ竹筒中倒出凡支銀針(竹筒をかしげて何本かの銀針を出して)、掌了針(針を手に取ると)、由幇手把牛脚反挙(助手に牛の足を持ち上げさせ)、才略微用手按了按傷処(わずかに手で傷口を押さえつけて)、看看牛的舌頭同耳役(牛の舌と耳たぶをみた)。因為要説話(言わなくてはならないので)、他就照例対迂主人的冒失(彼はいつものゆに主人のそそっかしさに対して)、加以一種責難(一種の避難を加えた)。説是這地方【作心ム】能【イ良】心乱打(このような処をどうしてひどく叩いたりしたのか)?東西打【イ良】了是不行的(槌なんかで叩いたらだめじゃないか)。又対主人随便把治人傷薬用到牛脚上(又主人に対して、勝手に人の傷に用いる薬を牛の足に用いたのも)、認為是一種将来不可大意的事情(将来いいかげんにできない事情だと考えたのである)。到後才在牛脚上随意礼了邦ム幾針(その後やっと牛の足に適当に何本かの針を打ち)、把一此薬用口嚼欄(薬を口で噛み砕き)、敷到針礼処(針を打ったところに塗り)、包了杉木皮(杉の木の皮で包帯をして)、説了”過三天包好”的話(「三日経てば必ずよくなる」と言うと)、属幇手把邦預許的一串白銅制銭工到肩上(助手にその約束してあった一串の白銅制銭を肩に担ぐように言い)、遊方僧邦ム従容揺四去了(行脚僧のように従容と、立ち去っていった)。
 把師伝送走(先生を送ると)、立占在門外辺(門の外に立っていると)、一ケ売片糖的本郷人従邦門前大路下過身(飴売りの土地の者が、その門の前の道を通り過ぎ)、看到了大牛伯在欠上門前立占(くもやんが門の前の土手に立っているのを見届け)、就関照説(知らせてくれた):
”大牛伯、大牛伯、今天場上有好柔牛肉(くもやんさん、今日、市場に良い肉がありますよ)、知道了没有(知っていますか)?”
 ”不、見汝的鬼(ちぇ、くたばりあがれ)!”他吐了一口沫(くもやんは、つばをはくと)、這様経経的回答了邦好意関照他的売糖人(親切に教えてくれた飴売りにそっと返答すると)、走近大門言的把門関了(門に入ってバタンと占めた)。