就職活動の心構え

中高年の就職(その2)
 ビルメンテナンスになんとか就職を果たしたが、必ずしも望む所ではない。
小さな不動産店とか、マンション管理人とか、どちらかというと、そんな方面を望んでいたけれど、その方面への就職は極めて困難だと思った。
 面接にたどり着くこと自体が、むずかしい。「年齢不問」と求人票にあっても、いざ、ハローワークで担当に電話をかけてもらって、色々な制限をうち明けられ、その場で不可を言い渡されてしまう。仮に履歴書の郵送をしても、面接さえなく、つっかえされてしまう。
 だから、幾ばくかの経験のある方向へと考え直すしかなかった。
 
 就職は果たしたとしても、月々の給料では間に合わないので、貯金を取り崩しての生活となる。
 もっとも、職場はまだ、見ていないので、どうなんだろう。
山椒大夫」のような、きついボスが取り仕切っているような所では、長くもいられないかもしれない。
 失業期間に十幾つか受けたが、そのウチの一つで、私は窮地に立たされたことがある。
 履歴書を送って、書類審査に合格、次の面接試験まで二週間の期間があった。その期間に、当社に訪れるとか、当社がどんな所なのか、調べたか、ということであった。
 その男性がボスと思われ、関取のように頭がでっかかったので、印象に残っている。
 契約社員という立場であるし、採用されても、せいぜい一年かそこらの雇用という気持ちがあったし、職場訪問するにも交通費もバカにならない。それに、失業とはいえ、日々回想録を書くことで小説家のように忙しい身ではある。
 今の辞世では、採用されることが極めてむずかしいのだし、いちいち、試験を受ける職場を詳しく調べておく余裕はない。
 しかし、ここは面接の場、そんな言い訳は通らないだろう。
 
 面接が終わった時点では、不愉快な気持ちだけが残った。
しかし、後に考えてみて、面接前に自分の職場となるかもしれな場所を見ておくことは、当然のことであるし、また、そうでなければならないということに思い当たった。
 
 ビルメンテナンスの仕事において、先ず、気になるのは、管球交換作業である。恐ろしく高い所はないか、脚立のてっぺんに立っても、届かないようなところはないか、これが現場を見ておく第一。次に、責任者、あるいは、周辺の従業員に、言葉の乱れた者はいないか。人間関係が重視される職場だからである。また、私は、すぐヒステリィを起こす人間に極めて弱い。また、いつヒステリィを起こされるか不安でならない。そうして、退職した理由もそうした人間との性格の不一致による。

 仕事場を見ておくことで、ずいぶんと、やる気にも差がでる。もう、就職活動は終わったのであるが、どんな職場を受けるにしろ、面接を受ける前に、派遣される所へ「職場訪問」してみて、そこで働く人と、幾つか、話をしておくのである。それで良い感触が得られれば、面接試験を受けるにしても、気合いも違ってくるだろう。
 無論、人事が、そうした活動を許さないという場合もあるだろう。しかし、そうした職場は敬遠することだ。