こころ

夏目漱石の「こころ」は、文学史上の名作のひとつではないか、と思います。登場するのは、「わたくし」とKというその友人、下宿先の母と娘、の四人です。「わたくし」なる青年は、両親を早く失い、遺産を相続しますが、その遺産を身内の叔父さんにだまし取られ、「世の中に信用するものは、存在しえない」とまで思い込んでしまいます。残った遺産で、上京し、大学に通います。その下宿先の、母と娘のふたりとの暮らしの中で、厭世的な心も和んでまいります。同じ学友にKという友人がおります。Kもまた、実家から勘当されて(縁を切られ)、生活に困っております。Kに同情して、「わたくし」は、下宿にKも同居させるにいたります。Kのことは、このように述べております。
禁欲的な勉強家であるとし、・・かれは、元来、無口な男でした。何か言おうとすると、言う前によく口のあたりをもぐもぐさせるクセがありました。と。
Kは結局、自殺するという結末になってしまうのですが、漱石が空想で作り上げた人物かというと、そうでもないようです。
「硝子の中」という作品にて、東北出身の親友がいたことを明らかにしております。
この友人は、大変な勉強家で、無口な男性だったそうです。
私はこの友人こそ、名作平生
「こころ」のKのモデルではないかと思っております。その友人は、大学を卒業すると、東北地方の横手と秋田で校長をして、しまいに樺太で、人生を終えた、とあります。本人の才能からすると、そのような人生が当人にとってそれはよかったのかどうか、とも述べております。
 横手というのは、私の母校で、歴代の校長の中で、漱石と友人であった人がいたとエピソードに残っております。話は脱線しましたが、秋になりましたので、読書もまた、有意義な過ごし方ではないかと思っています。