もう一つの日曜日

もう一つの日曜日

  歯真陀小誤
 
 もう今月いっぱいで会社は辞めると宣言した
 同僚の他の二人も、ひょっとしたら、
「やめるかもしれない」と同調していたが
 ぼくも、同じ気持ちだと聞いて、
ギョッとした感じでもあった。

責任者の立場にあるぼくは、 
最後の最後までまで
口にすべきではなかったかと思った。
 口が滑った
 おしゃべりは災いをよぶ、
これまさに、自分の軽率、ともおもった

責任者が変われば、雰囲気も変わってしまうだろうし、
もっと、彼らにやめようとの機運を促すだけのことなのだった。
彼らにも、それぞれ辞めたくとも辞められぬ事情があるのだし・・。

 競争入札
 7月からの建物総合管理なる事業を
 他社に取られてしまい。
 我々を担当する会社が
変わってしまうことになったのだった
6月いっぱいで、
お世話になった会社は去ってしまう

その新しい会社の担当がやってきて、
 先週は警備が面接をした
 来週は、清掃・設備の面接と続く、
そして受付が最後になるのだそうだ

 設備に泊まり勤務が入ることが大きな変更である
 大地震の到来とか建物に異変があれば
 防災センターには色々な警報が発生するものだ
 それに対応するには、
 やはり設備に詳しい人間が一番

 だから、どんなときも、
建物に設備担当がいることが望ましい
 オーナーとしても、安心するところだ。
 
それならそれで、他の負担を軽くしてほしい 
毎月のフィルター清掃を、
外注にしてもらいたいというのが
 設備の人間の要望のようではある。
 今まで通りの作業をしながら、なおかつ
 泊まりも増えるというのは、解せない、と。
 
 新しい会社が
どんな表情で我々に対してくるのか

職場は同じでもやり方が、違って来れば
全く別の会社に転業するのも同じである、と。

それなら、いっそ、辞めてしまえ、
その流れが、設備に高まっていた
会社都合で退職なら、失業給付も、早くもらえるものだ。
残留して、長続きしないで退職になったら、
自己都合退職となりハローワークでも
不利な扱いになる
それより、ましといえる

憶測が憶測をよび、諸説紛紛なのであった
こんな中で、
僕は面接は欠席してはやばやと退職するのだと公言した

 今の職場を去ったら、他はもっときびしいのが通常で、
どこへ行っても勤まるものではないと
説教をたれていた者も、
ひきとめてくることもなかった。

昨日、ハローワークの求人をみたが、
全くといっていいほど求人はなかった
また、広告だけでは、その職場がどんなものか、
何も見えてこない。
字面は良くても陰で狼のような人間が指をくわえて待っているかもしれない。
 いままでのような、
いろんなわがままを許してくれる状況ではないのがふつうだろう。
しがみついて、少しくらい厳しくても、これまでの仲間とやっていこうか、という気分もないではない・・。
  
 こんなとき、歯真陀小誤の
「もうひとつの日曜日」をきいた

 大変な聴衆を前に、気が動転すると思うのだが、
ひとつひとつかみしめるように、
相手に伝わるように歌っているのが印象的だった。

 そうだ、これだ、
 人生がいくら劣勢に陥るとしても、
 気を落ち着かせ、
 そのときの思いを、わかりやすく、適切な言葉で表現していく姿勢が大事なのだな、と思った。

仕事を辞めたいというのは
今になってはじまったことではないのだし、

やめたいのなら、やめよう、
そして、あらたな困難がやってきたら、
それはそれで、
そのときの心境をわかりやすく、ノートにつづっていこう、と
心に誓ったのだった