家庭教師

隣の町は、鎌ヶ谷市
日本ハムファイターズの2軍グランドであり、
斎藤佑樹投手や、大谷投手、いやダルビッシュなども、
ここで練習していた時代があった。

その鎌ヶ谷市の、
資産家と思われる、あるお宅で家庭教師をしたことがある。
広大な敷地、古いが頑丈そうな家屋。閑静な住宅街・・。
もう30年位前のことである。

E君は、まじめが取り柄なのだが、
教えても教えても、
とろこ天のごとく忘れてしまう、
救いようのない生徒だった。

お母さんはとても愛想のいい人で、
いつもにこにこ、
やさしい感じだった。

E君のことを、かわいがっているらしく、
君よ、がんばればきっといいことがある、
がんばろう、
と授業後
発破をかけた。

本来、それは、
担当している僕がいわねばならないのに、
あまりにもできないので
(高いお金をかけて、家庭教師を雇うのは無駄ですよ)
と口まででかかっていた。

お兄さんは首都圏屈指の進学校開成学園だった。
クラスでどん尻でも東京大学に合格というスゴイ学校だ。

でも、E君の真剣に問題を問こうとしている表情は忘れられない。
ちょっと考えればわかりそうな問題を、
必死になって、
じっとして何にもこたえられない。

キミはこんな簡単なこともわかならいのか・・
とツイ言ってしまいそうにもなった。
よし、すこしヒントだよ、と
ともかく一緒に解いてやった。

その年があけて、いよいよ受験。
目標中学はダメだったが、
市川市の坊ちゃん学校に合格した。

兄貴とは全くくらべものにならない学校ではあったが、
お母さんは本当に満足した感じであった。

あれから、30年、
秀才の兄貴と、
凡庸なE君とで、
どんな道をたどっているか知りようはない。

いくらがんばってもなかなかダメ、
限界をしりつつも、
あきらめず、
ともかくやりぬこうという
E君の方に軍配があるような気がしているのだが

どうなのだろう・・。